「感慨深いですね」
「……いよいよ最後の冬組が決まるわけか」
秋組リーダーの摂津万里が、いづみを振り返る。
休日で賑わう通りの様子とは対照的に、公演のない劇場は静まり返っている。締め切られた入口の扉には『オーディション会場』と書かれた紙が貼りだされていた。
数多の劇場が並び立つ演劇の聖地、ビロードウェイ。その片隅に、MANKAIカンパニーの専属劇場はひっそりと建っていた。
秋組の団員である古市左京が、舞台の中央に並べられた五つの椅子を客席から見上げてつぶやくと、総監督の立花いづみもうなずいた。
新生MANKAIカンパニーの発足時を知る二人にとって、春、夏、秋組と団員を揃えて旗揚げ公演を成功させた上で迎えるこの冬組オーディションは、今までと少し違ったものがある。
「俺らの時は定員ギリだったけど、いつもあんなもんなのか?」