『ワレワレモ宇宙人ダ。地球ニハスパイトシテ潜リ込ンデイタ』

不意に、のどかな空気を震わせる奇妙な声が響いた。

カクカクとロボットダンスのような動きで、皇天馬が甲高い声で告げる。

『ワレワレハ宇宙人ダ。コレヨリ地球ニ侵略ヲ開始スル』

対する月岡紬も、ロボットの動きで言い返す。

ゆったりと大きな雲が流れていた。影がMANKAI寮の中庭の草花に陰影を作り出し、緩いスピードで過ぎていく。

隣に並んだ佐久間咲也が威嚇するように、腕を振り上げる。

『横槍ハ宇宙連邦法ニ反スル。速ヤカニ退去セヨ』

『命ガ惜シクバ速ヤカニ降伏セヨ』

A3! FULL BLOOMING

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対する月岡紬も、ロボットの動きで言い返す。

カクカクとロボットダンスのような動きで、皇天馬が甲高い声で告げる。

不意に、のどかな空気を震わせる奇妙な声が響いた。

ゆったりと大きな雲が流れていた。影がMANKAI寮の中庭の草花に陰影を作り出し、緩いスピードで過ぎていく。

『ワレワレモ宇宙人ダ。地球ニハスパイトシテ潜リ込ンデイタ』

隣に並んだ佐久間咲也が威嚇するように、腕を振り上げる。

『横槍ハ宇宙連邦法ニ反スル。速ヤカニ退去セヨ』

『ワレワレハ宇宙人ダ。コレヨリ地球ニ侵略ヲ開始スル』

『命ガ惜シクバ速ヤカニ降伏セヨ』

A3! EVER LASTING

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「はいはい、どちらさま――」

無機質な黒い画面に、緑色の英字の羅列が浮かび上がり、明滅する。

年のころは三十代半ばといったところだろうか。ダークカラーの短髪は右側で分けられ、瞳はグリーンがかっていて、思慮深さを感じさせる。

「失礼する」

呼び鈴が鳴って、ポテトをくわえた支配人が小走りに玄関に顔を出す。

MANKAIカンパニー秋組第四回公演が無事に千秋楽を迎えた夜、MANKAI寮では盛大な打ち上げが行われていた。

SYSTEM READY・・・[OK]

三和土で頭を下げていたのは、エキゾチックな装束に身を包んだ長身の男だった。

直後、画面が白く染まった。

A3! The Greatest Journey

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地方での再演などを別にすると、公演のない組は比較的、時間にも気持ちにも余裕がある。しばらく公演の予定がない千景の悠々とした態度を見ながら、綴は苦笑いを浮かべた。

春組、夏組と新団員を主演に据えた第四回公演を終え、自然と秋組へと考えが巡る。

昼ご飯を終えたいづみは、緑茶の入った湯飲みを手に、ソファに腰を下ろした。

「夏組の公演も終わったし、次は秋組か……どんな団員が入るか楽しみだね!」

いづみが向かいに座っていた春組の卯木千景と皆木綴に話しかけると、千景はちらりと綴に視線をやった。

季節は巡り、春と夏が過ぎれば、また秋が来る。

「脚本の綴はずっと休みなしだから大変だな」

少しずつ柔らかくなってきた日差しが、MANKAI寮の談話室の窓から差し込んでくる。

「そうっすねー……」

A3! ボーイフッドコラージュ

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「九ちゃん、十ちゃんの後を追いかけてきたんだね」

「九門くん、劇団に入りたいって、本気?」

兄と同じ組に入りたいと告げる九門を、夏組の向坂椋が感激したように見つめた。

十座たちの従兄弟である椋は、九門とも幼少の頃から親しい間柄だ。

「夏組通り越して秋組に新しい団員か」

「うん。劇団のブログに新しい団員を募集してるって書いてあっただろ。オレ、オレ……秋組に入りたい!」

新生MANKAIカンパニーが有する団員寮の談話室に、朝の眩しい日差しが降り注ぐ。のどかな風景とはうって変わって、室内はざわめきに満ちていた。

真意を推し量るように、劇団の主宰兼総監督の立花いづみがたずねると、九門ははっきりとうなずいた。

春組に新団員、卯木千景を加えて迎えた第四回公演を無事に終え、盛大に打ち上げが行われた翌日のことだった。早朝に突然寮を訪れた兵頭九門は、兄である兵頭十座と主宰兼総監督の立花いづみを前にして、自分を劇団に入れてほしいと言い放ったのだ。

A3! 続・克服のSUMMER!

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皆、解放感と達成感に包まれ笑顔を浮かべている。

とある地方都市のホテルの宴会場の入り口に、MANKAIカンパニー春組ご一行様の名前が掲げられていた。お盆を持った仲居がしずしずと出てくると、室内からにぎやかな乾杯の歓声が弾ける。

MANKAIカンパニーの総監督であるいづみと春組メンバーはつい数時間前、ホテルにほど近い劇場で地方公演の千秋楽を迎えたばかりだった。地方での興行はいづみ達にとって初めての試みだったが、一週間ほどの公演はすべてソールドアウトし、観客の評判も上々だった。

立花いづみが満面の笑みで、水滴の浮かんだビールジョッキを頭上に掲げる。

「すごい盛り上がってましたよね!」

脚本担当でもある皆木綴がしみじみともらすと、佐久間咲也が大きくうなずく。

「やっぱり、アドリブで方言ネタ入れたのは正解だったな」

「みんな、お疲れさま~! ロミジュリ再演大成功だったね!」

A3! めざめる月

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数多の劇場が並び立つ演劇の聖地、ビロードウェイ。その片隅に、MANKAIカンパニーの専属劇場はひっそりと建っていた。

新生MANKAIカンパニーの発足時を知る二人にとって、春、夏、秋組と団員を揃えて旗揚げ公演を成功させた上で迎えるこの冬組オーディションは、今までと少し違ったものがある。

「……いよいよ最後の冬組が決まるわけか」

「俺らの時は定員ギリだったけど、いつもあんなもんなのか?」

秋組リーダーの摂津万里が、いづみを振り返る。

秋組の団員である古市左京が、舞台の中央に並べられた五つの椅子を客席から見上げてつぶやくと、総監督の立花いづみもうなずいた。

「感慨深いですね」

休日で賑わう通りの様子とは対照的に、公演のない劇場は静まり返っている。締め切られた入口の扉には『オーディション会場』と書かれた紙が貼りだされていた。

A3! もう一度、ここから。

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――何でもいい。とにかくアツくなれるものを求めていた。

「誰、ソイツ?」

人生なんてイージーモードだ。本気になって必死になってる奴らを見ると不思議でしょうがなかった。

「またアイツかよ」

なんでそんなに頑張ってんだ? 何もかもこんなに簡単なのに。

満たされない渇きを埋めたくて、あらゆることをやった。犯罪スレスレ、自分の命の保証と引き換えでも構わなかった。

スポーツも勉強もケンカも何もかも、別に本気を出さなくても誰よりもうまくやれる。退屈で無味乾燥な日常。

「なー、知ってる? 兵頭十座がヤマ高の頭ツブしたって」

大して仲良くもない、まとわりついてくるからって理由でつるんでた奴らの会話がふと気にかかった。

A3! バッドボーイポートレイト

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「わー! おつかれさまでした!」

「おつかれー!」

主宰兼監督である立花いづみはおもむろに椅子から立ち上がると、軽く咳払いをした。席についていたメンバー全員の視線が集中する。

高らかに宣言した途端、わっと歓声があがる。

リーダーの咲也が勢いよく拍手をすれば、綴も頭上で手を叩く。

ダイニングテーブルの上にはソフトドリンクや缶ビールなどの飲み物や、サラダや唐揚げ、コロッケにカレーやおにぎりといった食べ物が所狭しと並んでいる。

「えーそれでは、春組旗揚げ公演が無事、満員御礼で千秋楽を迎えられたことを祝いまして、打ち上げを開催したいと思います!」

「おつおつ」

劇団新生MANKAIカンパニー春組の団員五人を含む関係者全員が集まった談話室には、いつになく熱気がこもっていた。

A3! 克服のSUMMER!

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客席は満席だった。観客の潜めた話声や、プログラムをめくる音、席を探して歩き回る足音、期待や静かな興奮が、幕越しでもひしひしと感じられる。

「いよいよ千秋楽ですね」

その斜め後ろには脚本担当でもある綴が眉根にしわを寄せて、ボロボロになった台本に目を通している。

空っぽだった小さな劇場に観客たちが集まって来る。人々の熱気でじわじわと劇場内が温まっていく。

まさかこの期に及んでセリフを変える気じゃないかと内心はらはらしていると、薄暗い空間に青白い光が灯った。

準主演の真澄はうなずくでもなく、ただ静かな表情で隣にたたずんでいる。

舞台袖から客席を覗く五人の劇団員たちに、いづみはちらりと視線を送った。

いづみはこの時間が好きだった。人々の意識が舞台の一点に集まりだす。始まりを待つ緊張感。

噛み締めるように、自らを奮い立たせるように、座長であり主演の咲也がそう呟く。

A3! The Show Must Go On!

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