(空っぽだった劇場が、人の熱気でじわじわと温まってくる。客席は満員らしい。期待や静かな興奮を幕越しでもひしひしと感じる)

(真澄くんは相変わらずクールだな。オレとは大違いだ)

(シトロンさんは相変わらず何考えてるかわからないけど、落ち着いてるな)

(千秋楽だ。ここまでやってきたこと、全部出し切りたい。緊張と不安で膝が笑いそうになる)

(大丈夫。何度もだめかと思ったけど、ここまで来られた。やっとここまで来られたんだ)

(至さんもちょっと緊張してるみたいだ。座長のオレがしっかりしなくちゃ)

(心が震える。緊張も不安も興奮も全部飲み込んで、胸の中のつぼみがほころぶような気がする)

(綴くんはずっと台本読んでるけど、この期に及んでまた台詞変えようなんて言わないよね?)

「A3!」

GAME

『ワレワレハ宇宙人ダ。コレヨリ地球ニ侵略ヲ開始スル』

隣に並んだ佐久間咲也が威嚇するように、腕を振り上げる。

『ワレワレモ宇宙人ダ。地球ニハスパイトシテ潜リ込ンデイタ』

対する月岡紬も、ロボットの動きで言い返す。

不意に、のどかな空気を震わせる奇妙な声が響いた。

『命ガ惜シクバ速ヤカニ降伏セヨ』

ゆったりと大きな雲が流れていた。影がMANKAI寮の中庭の草花に陰影を作り出し、緩いスピードで過ぎていく。

『横槍ハ宇宙連邦法ニ反スル。速ヤカニ退去セヨ』

カクカクとロボットダンスのような動きで、皇天馬が甲高い声で告げる。

A3! FULL BLOOMING

BOOK

『ワレワレハ宇宙人ダ。コレヨリ地球ニ侵略ヲ開始スル』

『横槍ハ宇宙連邦法ニ反スル。速ヤカニ退去セヨ』

隣に並んだ佐久間咲也が威嚇するように、腕を振り上げる。

ゆったりと大きな雲が流れていた。影がMANKAI寮の中庭の草花に陰影を作り出し、緩いスピードで過ぎていく。

対する月岡紬も、ロボットの動きで言い返す。

カクカクとロボットダンスのような動きで、皇天馬が甲高い声で告げる。

『ワレワレモ宇宙人ダ。地球ニハスパイトシテ潜リ込ンデイタ』

不意に、のどかな空気を震わせる奇妙な声が響いた。

『命ガ惜シクバ速ヤカニ降伏セヨ』

A3! EVER LASTING

BOOK

直後、画面が白く染まった。

MANKAIカンパニー秋組第四回公演が無事に千秋楽を迎えた夜、MANKAI寮では盛大な打ち上げが行われていた。

SYSTEM READY・・・[OK]

年のころは三十代半ばといったところだろうか。ダークカラーの短髪は右側で分けられ、瞳はグリーンがかっていて、思慮深さを感じさせる。

三和土で頭を下げていたのは、エキゾチックな装束に身を包んだ長身の男だった。

無機質な黒い画面に、緑色の英字の羅列が浮かび上がり、明滅する。

呼び鈴が鳴って、ポテトをくわえた支配人が小走りに玄関に顔を出す。

「はいはい、どちらさま――」

「失礼する」

A3! The Greatest Journey

BOOK

「脚本の綴はずっと休みなしだから大変だな」

「夏組の公演も終わったし、次は秋組か……どんな団員が入るか楽しみだね!」

昼ご飯を終えたいづみは、緑茶の入った湯飲みを手に、ソファに腰を下ろした。

いづみが向かいに座っていた春組の卯木千景と皆木綴に話しかけると、千景はちらりと綴に視線をやった。

季節は巡り、春と夏が過ぎれば、また秋が来る。

春組、夏組と新団員を主演に据えた第四回公演を終え、自然と秋組へと考えが巡る。

「そうっすねー……」

少しずつ柔らかくなってきた日差しが、MANKAI寮の談話室の窓から差し込んでくる。

地方での再演などを別にすると、公演のない組は比較的、時間にも気持ちにも余裕がある。しばらく公演の予定がない千景の悠々とした態度を見ながら、綴は苦笑いを浮かべた。

A3! ボーイフッドコラージュ

BOOK

兄と同じ組に入りたいと告げる九門を、夏組の向坂椋が感激したように見つめた。

真意を推し量るように、劇団の主宰兼総監督の立花いづみがたずねると、九門ははっきりとうなずいた。

「うん。劇団のブログに新しい団員を募集してるって書いてあっただろ。オレ、オレ……秋組に入りたい!」

十座たちの従兄弟である椋は、九門とも幼少の頃から親しい間柄だ。

新生MANKAIカンパニーが有する団員寮の談話室に、朝の眩しい日差しが降り注ぐ。のどかな風景とはうって変わって、室内はざわめきに満ちていた。

春組に新団員、卯木千景を加えて迎えた第四回公演を無事に終え、盛大に打ち上げが行われた翌日のことだった。早朝に突然寮を訪れた兵頭九門は、兄である兵頭十座と主宰兼総監督の立花いづみを前にして、自分を劇団に入れてほしいと言い放ったのだ。

「九門くん、劇団に入りたいって、本気?」

「夏組通り越して秋組に新しい団員か」

「九ちゃん、十ちゃんの後を追いかけてきたんだね」

A3! 続・克服のSUMMER!

BOOK

「やっぱり、アドリブで方言ネタ入れたのは正解だったな」

脚本担当でもある皆木綴がしみじみともらすと、佐久間咲也が大きくうなずく。

皆、解放感と達成感に包まれ笑顔を浮かべている。

立花いづみが満面の笑みで、水滴の浮かんだビールジョッキを頭上に掲げる。

とある地方都市のホテルの宴会場の入り口に、MANKAIカンパニー春組ご一行様の名前が掲げられていた。お盆を持った仲居がしずしずと出てくると、室内からにぎやかな乾杯の歓声が弾ける。

「みんな、お疲れさま~! ロミジュリ再演大成功だったね!」

MANKAIカンパニーの総監督であるいづみと春組メンバーはつい数時間前、ホテルにほど近い劇場で地方公演の千秋楽を迎えたばかりだった。地方での興行はいづみ達にとって初めての試みだったが、一週間ほどの公演はすべてソールドアウトし、観客の評判も上々だった。

「すごい盛り上がってましたよね!」

A3! めざめる月

BOOK
PAGE TOP