（空っぽだった劇場が、人の熱気でじわじわと温まってくる。客席は満員らしい。期待や静かな興奮を幕越しでもひしひしと感じる）
（大丈夫。何度もだめかと思ったけど、ここまで来られた。やっとここまで来られたんだ）
（綴くんはずっと台本読んでるけど、この期に及んでまた台詞変えようなんて言わないよね？）
（至さんもちょっと緊張してるみたいだ。座長のオレがしっかりしなくちゃ）
（シトロンさんは相変わらず何考えてるかわからないけど、落ち着いてるな）
（真澄くんは相変わらずクールだな。オレとは大違いだ）
（心が震える。緊張も不安も興奮も全部飲み込んで、胸の中のつぼみがほころぶような気がする）
（千秋楽だ。ここまでやってきたこと、全部出し切りたい。緊張と不安で膝が笑いそうになる）
